単独行は危険ではない

*以下の内容は「登山のリスク」についてのみ述べたものであり、「登山の楽しさ」は度外視しています。私は単独行が多いですが、たまには友人と山に行くこともあり、その時は非常に楽しいし、後で「あの山はよかったね」という話をするのもいいものです。単独の方が気楽でいいとか、寂しいから嫌だとか、大人数で楽しむ方が好きだとかいうのは論点が別であると承知の上でお読み下さい。



「単独行はやめましょう」という看板や注意書きを登山口や山中でよく見かけます。また山岳遭難の記事では「単独行は危険である」という論調が主流となっています。(登山を始めた頃は、こういうのを見ると非常に心細くなったり、不安になったりしたものです。)

そんな「単独行否定論」の根拠となっているのは、「単独だと行動不能になった時に、助けてもらえない、また助けを呼んでもらえない。→故に怪我や体調不良が深刻な事態となる可能性が高い」ということが筆頭にあげられます。

これに対する反論は2つあります。

①誰かと一緒だと自分のペースで歩けないことも多いでしょう。その結果、無理してしまい体調を崩したり、ケガに繋がる可能性も高くなります。単独だと自分のペースで歩いたり、休憩したりでき、そのようなことは相対的に少なくなります。(よほど気心の知れたパーティならともかく、ほとんどの場合で単独行の方が有利。)

②もし行動不能となった場合でも、よほど体格差がなければ安全なところまで移動させるのは大変困難なことでしょう。また治療や応急措置ができる人もあまりいないと思います。(必ずしも単独行だけが際立って危険ということではない。自分よりはるかに体格がよく、体力も技術もあって、山岳救助経験があり、医学にも秀でている人が一緒ならもちろんその方がいいですが。それに条件が近い人と一緒に登る機会なんてありますか?)


またデータ上で「単独行は危険だ」ということを示すためによく使われるのが、「死亡件数/遭難件数」の割合が単独行だと非常に高いというものです。(つまり遭難が死亡に繋がることが単独行だと多いということらしい。)

これについては、単独行の人はちょっとした道迷いとか、軽傷くらいでは安易に助けを求めたりしないで、自分でなんとかしているという側面があるように思います。また体力、技術、経験など総合的な登山力(とでもいうべきもの)が相対的に高いので、遭難件数にカウントされるような事例はあまり引き起こさないという要因もあるのでしょう。
すべて想像に過ぎませんが、私としてはむしろ単独行だと「軽微な遭難を起こすことが少ない」ということを示しているように思います。


登山のリスクというものを考えた場合、例えばパーティの「誰か」が体調不良になったり怪我したりする可能性は、理論上は人数に比例して高くなります。一人にトラブルが起きたならそのパーティにトラブルが起きたことになりますが、その意味では単独行が一番リスクが低いとも言えるわけです。

そんなのは詭弁だと思った方は、グループで山に行った時のことを想像してみて下さい。あなたが健脚でも、一人遅い人がいれば目的地に着く時間は遅くなってしまいます。あなたは岩場やガレ場が得意でも、一人苦手な人がいたらパーティはそこを通過できないし、誰かが怪我をしたら、自分は元気であっても山行きが終了してしまうかもしれません。つまりパーティの実力は「一番低い人の実力」になってしまうということも多いのです。単独行なら自分の実力がすべてであり、他の人に引っ張られることはありません。

グループだとより危険なのが、岩場など落石の危険が大きいルートを通過する場合です。前の方の人が落石を起こしたら、その後ろにいる人たちが直撃される可能性があります。また前の人がバランスを崩したら、そのあおりで転倒や滑落することもありえるでしょう。単独行で前後の人との間隔を注意していれば、こういったリスクはほぼゼロになります。

信じられないことですが、仲良くおしゃべりしていて分岐に気付かず遭難したという事例もあるし、そこまででなくても誰かと話しながらだと注意力が散漫となり、ちょっとした段差や岩などで怪我するようなことも十分ありえます。

単独の場合に有利なこととして予定を変更しやすいということがあります。直前の天気予報を見て中止したり行き先を変えるとか、天候が悪化してきたら早めに下山したり、逆に小屋泊まりに変更したりと臨機応変な行動を取ることでリスクを減らすことが可能です。グループだと予定を強行しがちで、それが遭難に繋がった例も多いように思います。(山頂を前にして自分から止めようとは言いにくかったりもするのでしょう。)


色々考えてみても「単独行だからリスクが高い」とは私には思えませんし、むしろグループ登山の方がリスクが高いのではないかという気がしてなりません。山で見かける人達に対して大丈夫かなと思うことは結構ありますが、単独の人にそう思うことはほとんどなく、グループ、特に大人数のグループに対して不安に思うことが非常に多いのです。

登る人数は単独でも2人でも10人でも何人でもいいのですが、パーティの一人一人が十分に「登山のリスク」を考えて行動することが、安全のためには絶対必要であるように思います。そして個々の総合的な登山力が高くなればなるほどリスクは減ると思います。私は「リスク」を十分意識して、少しずつでも登山力を高めていき、トラブルのない登山を続けていきたいと考えています。


以上は男性である私の主張なのですが、女性の場合は「山で一番恐いのは人間の男性」だなどと言われたりしていますから、単独行は危険だし、恐いという意見があっても十分理解できます。


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この記事へのコメント

2007年06月22日 09:39
はじめまして。
考えさせられる記事ですね。

 私も、単独・グループ登山をしますが、単独行は、行動不能になったときの救助連絡手段の確保が難しい、とつねづね自覚しています。

 どうしても、探すほうの側・家族親族の立場になると「単独行は止めてください・危険」と言いたくなるのではないでしょうか?。
 実際、この1・2か月でも、袈裟丸山・粟が岳へ単独入山された方が行方不明となって見つかっておりませんし。

 慎重な計画と臆病な実行力を持って、実績を積み上げていけば、単独行は危険ではない・周囲の理解が得られるかな。
 「単独行は危険」この言葉が単独行者の慎重な行動を注意喚起しているのかも知れません。 「単独行は危険ではない」これを鵜呑みにして、無防備・安易に山へ入ってもらいたくありません(いろいろな人がいますから)。
ユリノキ
2007年06月22日 21:06
 一人で歩くと言うことはそれなりの覚悟があって相当に慎重な行動を心がけています。
 
 確かに女性の場合ひとけのない林道などは特に不安がありますし、付きまとわれて嫌な思いをしたこともありました。
 年配の夫婦で歩いている姿を見るとちょっと羨ましいです。
2007年06月23日 02:35
テントミータカさん こんにちは。ご意見ありがとうございます。

私は「単独行は危険である」という言葉の裏に「グループなら安全だね」という捉え方をしている人が多いような気がしてならないのです。

形態はどうであれ、自分の実力に見合った登山をすることが、リスクを低くすることになるのでしょう。

山岳救助隊などのお世話にならないよう、慎重に行動するようにしていきたいものです。







2007年06月23日 02:45
ユリノキさん こんにちは。コメントありがとうございます。

やはり女性だと男性とは違った不安がありますよね。それは十分理解しています。

ただし一応若い男性の立場で言わせていただくと、何もしていないのに変質者や犯罪者を見るような態度を取られると、結構へこみます。

できましたら、さりげなく距離を取るようにするなどして、露骨な避け方や過剰な反応は控えていただけたらありがたいです。(本当に危険を感じるような時はもちろん別です。)

ちなみにそんなひどい扱いを何度も受けたというわけではありませんけど。





NJ
2007年06月24日 19:00
最近は 単独、 友人と2,3人
山岳会で といろいろの形態で登っているんですが。 足のそろった 友人と登るときと比べると 確かに リスクは高いかなともおもったり。 山岳会でも 沢山だと 其の分時間はかかるし、誰か故障すれば ビバークする確率は
人数分だけ増えるかな とも思うし。 私が単独で入るときは、 最後の登山者には けしてならないように、早め 早めに下山する、絶対こけないように 特に下山後半注意する ということくらいでしょうか。それに、単独のときは、有名な 他の登山者がいそうな 山しか入らないとかね。 単独といっても なんか あったら、他の登山者に 遭難要請するしかないですよね。 そういう意味では 最近 火打妙高いって 下山が5時過ぎてしまって、 失敗であったと 反省してます。 無理の無い計画が必要なんでしょうね。
2007年06月24日 23:09
NJさん こんにちは。

何人で行くにせよ、無理のない計画がリスクを下げるのに絶対に必要だなと思います。

「絶対にこけないように」っていうのはよく分かります。そういう意識は特に下山時には強く持っています。

DUKE
2007年06月25日 21:33
そうですね。いままではどちらかと言うと「単独山行は危険性が高い」と思ってましたが、この記事を読んでみるとそうでもないな、と思ったり。説得力ありますね。

ただやはり、初心者には危険ではないでしょうか。やはりある程度経験者の人に連れて行ってもらってそれから単独山行、というのがセオリーという気がしますが。

グループで行くと特に決断力が鈍るような気がします。まだ僕は単独で登ったことがないので比較はできないですが、去年、縦走途中に悪天候となり、すぐ近くのピークに行くか行かないかで揉めた事が思い出されます。
人が集まるほど自分の意見が言いにくくなったり。しかも同じ年齢層の連中と登るとなかなか意見がまとまらなかったりします。それもそれでいい思い出ですが。

ちなみにけっこう無茶な計画が大好きだったりします。
2007年06月26日 08:31
DUKEさん こんにちは。

単独でもグループでもいいのですが、一定以上の能力がないと危険は大きくなるように思います。

単独の人だとまずないでしょうが、グループだと連れていってもらうだけの人がいたりするので、登山リスクは大きくなる場合があると思うのです。

余裕がある計画ばかりじゃつまらないので、多少は無茶なところがあってもいいのでしょう。ただし最悪の事態への想像力は最低限必要かなと思います。

つっしー
2008年07月08日 20:28
こんばんは。
今日、本屋で「岳人」という登山雑誌を立ち読みして、女性の独り歩きの怖さを記事にしていましたが、常に独り歩きの私にしては少し不安になってしまいました。
目標は独りテント泊なのですが、やはり危ないものでしょうか・・。登山より人間の男の人が危ないような体験記事だったので・・。山男には悪い人はいないと思い込んでいた私にとって、8月の上高地が少し不安です。
2008年07月09日 00:05
つっしーさん こんばんは。コメントありがとうございます。

これは1年以上前に書いた文章なのですが、考えていることは全然変わっていません。

山でも街中でもいい人と悪い人の比率はさほど変わらないのではないかと思います。山では逃げ場がない場合があるので、女性の単独の方はその分恐いこともあるのかもしれません。

8月の上高地は日中なら銀座や新宿のように混んでいますよ。キャンプ場も結構人がいるでしょうし、場所としてはそんなに不安なところではないと思います。







つっし
2008年07月09日 22:22
早速、お返事ありがとうございます。
なんか、安心しました。
不安や恐怖はたくさんありますが、夢は独りテント泊です。
今年度は無理ですが、来年はテントを背負って気ままな夏休み縦走をと思っています。
では、またお邪魔させていただきます。
2008年07月10日 10:21
つっしーさん こんにちは!

私はテント泊経験は少ないですが、独りテント泊はきままでいいですよ。来年といわずぜひ実行してみてほしいです。

人気のあるコース、テン場を選ぶと、だいぶ不安が減ると思います。


yo-ko
2008年08月16日 15:30
こんにちは、まるふくさん
わたくしは女性で、グループでも単独でも登山しています
つっしさんと同様、夢はソロテントで、考えるとワクワクしてしまいます
行きましょうね>つっしさん

わたくしも単独の時は、NJさんと同じように考えて行動しています
一度だけ予想が外れて、5km前後誰も居ないときがありました
歩きながら、ツェルトは必要だ!と、思いました

グループのリーダーから
単独登山は危険だから、自分で計画を立てたら声をかけて欲しい
3-5人で行けば何かあったら対処できるから、同行者を募るから
と、言われました
でも~、、、まるふくさんが言われているように、単に人数を揃えたら
それが安心なの?と思ったりします

先日グループで雲取山へ行き、一番弱い2人が歩行時間の予測も出来ない状態で
大雨と雷に遭いました
ヘッドランプを点ける直前の6時過ぎに小屋到着
わたしには、いままでしてきたどの単独山行より、
このグループ山行の方が何倍も恐ろしかったです
2008年08月16日 17:04
yo-koさん こんにちは!

先日ソロテントで尾瀬、燧ケ岳に行ってきました。単独テント泊はきままでいいですよ。ただし独りでテント泊だと荷物が重くて大変でした。

ごく一般的な登山コースでは、安全に最も直結するのは天候と体調だと思います。単独だと直前に行き先を変更したり、取り止めたりしやすいし、自分のペースで歩けるから体調を維持しやすいと思います。

グループだと自分が足を引っ張るのも嫌だし、誰かに引っ張られるのも嫌なものですね。私は友人と山に行く時は、かなり楽なコースを選ぶようにしています。

形態に関わらず、一定の体力、技術、体調が揃った人でないと登山でのリスクは高まると思います。グループだとどれかが欠けた人が含まれることも多いので、結構危険じゃないかと思ったりもします。


yo-ko
2008年08月17日 18:19
あら~
早速のレス、うれしいです

先日、初テント泊経験してきました
♂1♀2です
とても楽しかったのですが、、、
ぜひともソロテン泊!
と、思いましたです

理由は
気兼ねなく着替えたり躰を拭いたり
好きな食べ物を食べる
夜の自由時間を好きに過ごす

それと、、、
トイレの時間を制御されないかなぁ
あとは、イビキとか体臭とか
ガマンは出来ますが、惚れた相手じゃないので臭いのはカンベンってところ(わは
2008年08月18日 02:46
yo-koさん こんばんは!コメントありがとうございます。

気のあった仲間とテント泊というのもいいですね。一人の場合は夜がかなり長く感じることがあります。

単独行でテント泊だと、あれこれと敷居が高いこともありますが、まずはテン場までが楽で、小屋に色々頼れるところだと安心ですよ。尾瀬のキャンプ場は初めて行くにはいいところだと思います。

私もまたテントを持って山に行きたくなりました。



yo-ko
2008年08月19日 06:05
ソロデビューはどこにしようかなぁ
、、、と、あれこれ物色していたところです
尾瀬ですか
ん~、、、いいかも。いいかも~

体力を考えて、最初は同じ場所に連泊すると楽チンでイイかしらん
なんて思ったんですけど、軟弱ですか
2008年08月20日 02:31
yo-koさん こんばんは!

連泊だと多めに食料を持っていかないといけませんよ。私はあまり体力もないし、ザックも小さめなので難しいです。

八ヶ岳の青年小屋、行者小屋、双子池、北アの徳沢あたりが行ってみたいと思っているところです。

昨年秋にテント泊した雲取山の奥多摩小屋もとってもいいテン場ですよ。
yo-ko
2008年08月23日 17:23
雲取山は近くてイイのですが、印象は悪いんです
、、、前に述べた悲惨なグループ山行で通ったんで

取りあえず、60L程度のザックが必要らしいんで
神保町まで行って背負って買ってきます
ついでに、靴も、、、
2008年08月23日 21:25
yo-koさん こんばんは!

雲取山はとてもいい山なので、ぜひ天気のいい時に単独か少人数で訪れてみて下さい。私は何度でも行きたいところです。

雲取山荘のテン場はロケーションがよくありませんが、奥多摩小屋のテン場は水場もあるし、テントから富士山や飛竜山が見えるロケーションですよ。

私はテント泊でも45Lのザック使っています。もう少し大きいザックが欲しいところです。

神奈川 百人
2017年08月21日 21:09
単独登山の死者が多いから、危険だと言ってだけです。5~6人位が一番安全だときました。ヘルメットもシートベルトも装着を義務化したら、死亡事故が減りました。当時は反対者も沢山いました。社会的な負担額が増えるなら、 同じ事がおきるかも。
ただ車と違って免許制はいらない。個々のレベルを決める試験もない。初心者でも冬の富士山に登ってもいい。捜索費用が莫大な額になり、死者が今の何倍にもなればまた変わるでしょう。俺は絶対に遭難しないし、交通事故も起こさないと言うのは似てる。単独登山者は、高齢になっても、やっぱり単独で登るのでしょうね。





まるふく
2017年08月22日 10:44
神奈川 百人様コメントありがとうございます。

もう十年以上前に書いた文章ですが、考え方は今も変わっていません。

単独行は危険ではないというタイトルですが、もちろん単独行は危険です。登山には人数に関わらず危険が付き物ですから。

ただ一般的に単独行だけが際立って危険だと言われているので、そうじゃないだろうというのが私の考えです。

あと単独登山の死者が多いというのは分母が大きいからで、確率が必ずしも高いとは思いません。

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